今年も永代経法要をお勤めします。永代経とは永代に渡ってお経が読み継がれていくことを願って勤める法要です。浄土真宗において、お経とは浄土三部経、即ち「仏説無量寿経」「仏説観無量寿経」「仏説阿弥陀経」のことですが、これらは今から二千年以上前にインドで成立したものです。それを今勤めるということは、お経が遥か時空を超えて私の元まで届けられたということであり、それを今、私が受け取ったということに他なりません。
「届く」と言えば、私たちは今日注文したものが明日届くのが当たり前の世の中を生きています。でも昨年、その仕組みを支える物流業界の疲弊がニュースになりました。物流・宅配に従事している人たちの長時間労働が慢性化しているというのです。原因の一つに挙げられたのが受取人の留守による再配達の増加でした。言われてみれば私にも当たる節がありました。ワンクリックで荷物が届く手軽さ故、昨日自分で注文した品物のことを忘れて配達指定時刻に出かけていることが幾度かあったのです。
しかし考えてみれば一晩で遠方から荷物が届くというのは決して手軽なことではありません。一日中倉庫で仕分けをしたり、夜通しトラックで高速道路を走ったり、重い荷物を抱えて路地を駆け巡ったり・・・多くの人々のご苦労があって初めてこの仕組みが成立します。またインターネットがこれほど普及するまでにどれほどの投資がなされたでしょう。あるいは国中を巡る道路は誰が作り、維持しているのでしょうか。ニュースを機に有難いことを当たり前のことと貪っていた私の姿に気付かされました。
話をお経に戻して、それがどうやって私まで届けられたか考えてみれば、そこにも無数のご縁があったことに気づかされます。ヒマラヤの雪山を超え、中国の砂漠を超え、日本海の荒波を超え、お経は私たちの国にもたらされました。でも単に書物が物理的に届けられただけなら、二千年の時を超えて今日まで残ることはなかったでしょう。読んで味わい、優しく内容を説き開いてくださった方々があります。そこに七高僧や親鸞聖人、蓮如上人の姿が見えます。そしてその話を聞いて、これは自分のための大切な教えだと喜び、後世に残さなければと環境を整えてくださった方々がいます。その中にきっと皆さんのご先祖様の姿があるでしょう。こうした無数の人々の願いによって届けられたのが、今私たちが勤めるお経なのです。
どうか心を留守にして大切な荷物を受け取り損ねないよう、しっかりとお勤めさせていただきましょう。下記の日程でお勤めいたしますので、たくさんのお参り、心よりお待ちしています。
【日 時】5月13日(日)
◇昼の法要 14:00〜16:00 ◇夜の法要 19:30〜21:30
【ご講師】九條孝義 師
湖南市夏見の報恩寺の前住職。学校の先生でしたので、お話の分かり易さには定評があります。報恩講の参り合いのお寺にもよく出られているため、お話を聞いたことがある方もあるでしょう。因みに去年の龍光寺さんの報恩講でお話を聞かれた、壽命寺の某仏婦さんの感想は「ええ話やったから、ちっとも寝られへんかったわ」